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ぼくたちのぼうけん(下の巻)
僕たちが、まるで引き寄せられるようにしてこの遺跡にやってきたのは、亡きシャレン3世の魂が呼んでいたからだろうか。
いや、あるいは。魔王ネクロマンサーが持つ、シャレニアン王国を滅亡させたほどの恐ろしい魔力がそうさせたのかもしれないな。

僕たちに課せられた使命は、シャレン3世の魂を甦らせること、そして魔王ネクロマンサーを倒すこと。きっとこの二つに違いないんだ。
「使命」だなんて笑っちゃうでしょ?ほんの気まぐれの、ちょっとした探検のつもりだったのにさ。
でも、それが僕たち一族に与えられた役割なんだって、はっきりと分かったんだよ。



でさ。あれから僕たちは、噴水広場から通じている、「地下水路」まではたどり着いたんだ。これが噴水の源泉だったんだね。ここに写っているのなんてね、ほんのごく一部なんだよ。広かったなあ。
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まずは最初の使命を果たさなきゃ。そう、シャレン3世の魂を癒すことだ。シャレン3世の遺言書によるとね、亡くなるときに着ていたものを探し出せば、王の魂が救われるんだって。
これだよ。見つけだしたあとに写真を撮っておいたんだ。
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まるで迷路のような水路の中から、この4つのものを探し出さないといけないんだ。
これはちょっと苦労したな。狭い水路の中をヘトヘトになるくらいに歩いたのに、また同じ場所に出てしまったりするんだよなあ。



そうかと思うとね、いきなり広い場所に出たりもするんだ。そういう場所ってね、何かがありそうな、何かが起きそうな予感がすっごくする場所なんだよ。
そこには、機械仕掛けの廊下があったり、身の毛のよだつようなモンスター達が潜んでいたりするんだ。
ほら、こんな感じだよ。
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こういう写真を見るとさ、ネクロマンサーって、まさに悪魔なのかもしれないよね。こんな邪悪な顔つきをしている手下達がたくさんいるんだからさ。

そうだ。騎士のホールと同じでね、「何か」が無いと、開いてくれない部屋もあるんだよ。僕みたいに、メチャクチャな合言葉を唱えたって、開かないから気をつけてね。
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それからね、強い力を持っている人だと、その先には進めない水路もあったんだよ。そこにはね、呪文がかけられていてさ、「強い力」が水路に入れないようにしてあるんだって。
僕も入れなかったよ。へへ、これで意外と「強い力」ってやつを持っているみたいだね。いや、大して強くないことは分かってるけどさ・・。

ともあれ、みんな入れないからさ、「さあ、どうする?」っていう状況になったんだけど、「ボクなら入れるはずだよ」って言い出した仲間がいるんだ。
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真ん中で桃色の頭巾を被っている男の子がいるでしょ?彼はね、一族の中では、まだまだ子供でさ、戦士見習いをしているんだ。
今回の冒険にね、「どうしても一緒に行きたい」って、きかないんだ。危険な探検になるかもしれないから、ちょっと心配したんだけどね。でもね、「これも良い経験になるよ」っていう、長老の一言で彼を連れてきたんだ。

驚いたよ。彼は立派に仕事をやってのけたんだ。
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ほら、彼の足元に「シャレン3世の王冠」があるのが分かる?ブニャブニャしたモンスターをやっつけて、この王冠を見つけてきたんだ。
ほんと、彼がここにいてくれて良かったなあ。「この子が一人前になる日も遠くないな」って思ったよ。



でね。やっと4つのものを探し出してさ。
水路の突き当たりにあった、シャレン3世の遺骸の前に、捧げてみたんだ。ちょっと怖かったけどさ、「これできっと王の魂が甦るんだ」って勇気を出してみたよ。
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ほら見てよ!シャレン3世の魂が甦って、僕たちの前にその姿を現したんだ。思っていたより、ちょっと老けてみえたけど、間違いなくこの人がシャレン3世なんだ。
そしてね、シャレン3世の魂は、ゆっくりとした口調でこう言ったんだ。
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そう。まだ終わってはいないんだ。
僕たちに与えられた、もう一つの使命。

「魔王ネクロマンサーを倒して、シャレニアン王国とビクトリアアイランドを守るんだ!」




復活したシャレニアン3世の魂に導かれて、僕たちは魔王ネクロマンサーが潜む部屋へ向かったんだ。
この頃になるとね、少しずつなんだけど、僕たちは疲れを感じ始めていたんだ。この王宮はね、なにかの魔力が支配をしているみたいで、僕たちはここに長くいられないんだ。
残された時間は、わずかだったんだよ。

でも、ここまで来たんだ。勇気を出して前に進まないといけないんだよね。
ここから先は、僕たちが日々取り組んできた、修行の成果のみせどころだよ。お互いに助け合おうって誓ったんだ。
体力を与える呪文。体を素早く動かせるようにする呪文。力が涌いてくる呪文。モンスターの攻撃を和らげてくれる呪文。
そう、僕たち一族の結束をみせるときがきたんだ!
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長い長い、この「王の回廊」を歩いてさ。心臓はバクバクしてるし、足もちょっとだけ震えてた。そんな自分が情けなかったけどね。だって、魔王ネクロマンサーは、きっと強いに決まっているんだから。
でも、僕たちは戦うよ。僕たちは弱虫かもしれないけど、決して臆病者じゃないんだ。



でもね。
あともう少しで、ほんとにあとちょっとで、魔王の部屋に辿り着こうとしていたのに。
回廊の先にある、最後の扉が開かないんだ。魔王の部屋に入るためにはね、「何か」が必要みたいなんだ…。

そう、その「必要なもの」。
それは・・。
僕たちの、大切な仲間の「命」だったんだ・・。

「もういいよ、ここで帰ろうよ」って、皆が言ったよ。そうだよね。魔王は倒さないといけないけどさ、ビクトリアの平和は守らないといけないけどさ。
でもそれは、僕たちの命で購わなければならないものだったんだよ…。

僕はさ、すごくちっぽけなヤツなんだ。怖くてたまらなかった。「僕が犠牲になるよ」って、ついに言い出せなかったんだ。きっと皆がそうだったんだと思う。



そのときだよ。
仲間の一人が声をあげたんだ。

「まおうとのたたかいのときに、ボクはきっとやくにたてないよ。だから、ボクはここでみんなをみまもっているよ」

覚えてるかな?あの、一番年下の戦士見習いの子だよ。「少しは勉強になるかな?」って連れてきた子だよ。その子が手をあげたんだ。

「ぼくたちは きっとどこかで またあえる」

彼はそう言って、自分を護っていたイヤリングを、そっと耳から外したんだ。
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そして・・。
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それは選んではいけない道だったのかもしれない。誰かを犠牲にしてまで果たす使命なんて本当にあるのか、それは僕には分からない。
でもね、もう元には引き返せないんだ。僕たちはね、ここで本当の覚悟を決めたんだ。僕たちは、魔王ネクロマンサーを絶対に倒す。そして、絶対に生きて帰るんだって。



部屋の中には、魔王ネクロマンサーの玉座があった。そこにはね、魔力の宝石ルビアンが浮かんでいたんだ。
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シャレニアン王国を滅亡させてまで、魔王が奪い取ろうとした宝石がこれなんだよ。
こいつを叩けば、こいつを壊せば。きっと魔王は姿を現すに違いないんだ。
僕たちはね、全ての力を込めて、宝石ルビアンを叩いたよ。

・・・・・。
そして、ついに「彼」は僕たちの前に姿を現したんだ。
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強かった。本当に強かったよ・・。
目がくらむほどの強烈な光線が僕たちを襲ってきた。ときには体力をごっそりと奪われたりもしたんだ。うまい具合に魔王相手に戦えているときでも、たくさんの手下達が、僕たちを襲ってきたんだよ。
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でもね、僕たちは弱虫かもしれないけど、臆病者じゃない。
プリーストの長老は、必死に僕たちの身を護る呪文を唱えてくれた。
手裏剣が部屋中を飛び交い、火の矢が魔王を焼き尽くそうと唸りをあげた。ある者は爆弾を使い、そして僕は魔王のすぐそばで、剣を振るったんだ。

そして、もう駄目だ、もう限界だっていう時だったよ。
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魔王ネクロマンサーを、僕たちはついに倒したんだ!本当に長い長い戦いだった。
何度も命の危険を感じながら。
そして、一人の大切な仲間の命っていう、大きな代償を払いながら。
僕たちは、一つの大きな使命を果たしたんだ。



その夜。
遺跡ベースキャンプに戻った僕は夢をみたんだ。不思議な夢だったよ。
僕たちが出会った、たくさんの驚きと悲しみと喜びが、次々に現れては消えていったんだ。
でもね、そこには気になる影があったんだ。なんだか邪悪な影だった。
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いったいあの夢は何だったんだろう。
僕たちは、確かに魔王ネクロマンサーを倒したんだ。
あいつは絶叫しながら消えていった。
でも、もしも・・・。

僕たちの、そして君たちの冒険は。
きっと、まだ終わっていないんだ。
by fabken | 2006-08-04 23:18 | ギルドクエスト
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